谷野 能孝氏

技術・事業開発本部
新規事業推進部 部長

株式会社村田製作所
-技術・事業開発本部 新規事業推進部

Trusted株式会社は、世界中のあらゆる業界、規模の企業がオンラインでつながり、協業するためのプラットフォームを提供することを目的として創業されました。株式会社村田製作所様をTrustedのメンバー企業として迎えることができ光栄に思います。村田製作所は、先端的な電子材料、電子部品の設計や製造、供給を手掛けており、その分野におけるグローバル・リーダー企業です。1944年に設立された村田製作所は、革新的な高付加価値の技術開発を通して、社会の発展に貢献することを目指しています。日本の京都に本社を置く村田製作所のイノベーティブな技術は、携帯電話やヘルスケア機器、家電製品などに搭載されています。

このたび、技術・事業開発本部 新規事業推進部の谷野氏にお話をうかがいました。
(インタビュー日:2019年5月8日)

谷野 能孝氏
技術・事業開発本部 新規事業推進部 部長



1. 株式会社村田製作所について少しお話しください

村田製作所(以下、当社)は、単に社会を便利にするということだけでなく、人を幸せにする、あるいは困っている人を助けることができる、これらの価値提供が当社の使命であると理解しています。部品メーカーとしての当社のテクノロジー、経験、チャレンジ精神によって人々の幸せを追求し、その実現に貢献することは、当社のサステナブルな成長にもつながり、社会と当社にとってWin-Winの関係をもたらすと考えます。


2. スタートアップとの協業によって得た成果とは

当社は過去に、アメリカ、イスラエル、日本、フランスなどさまざまな国のスタートアップと協業してきました。また当社の関係会社を通してインドのスタートアップとも協業した実績があります。スタートアップのステージは様々ですが、相対的にアーリーステージの会社が多かったです。

国内外のスタートアップとの協業を通して、様々な試行錯誤を繰り返し、それに改善を重ねてきた経験が当社の強みや財産になっていると感じます。社内で事業をゼロから立ち上げる時間とコストを短縮して技術を獲得できたことは当社にとって大きなメリットです。

それに加えて、スタートアップとのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが、当社のR&D部門の若いメンバーのマインドセットの変革を促したことは、大きな成果でした。その結果、当社の開発者たちは自前主義や過去の成功体験に留まらず、スタートアップを1ベンダーとしてではなく、共創パートナーとして敬意を払いながら、いかにしてうまく価値を作り出すか、ということの重要性を理解しました。

その一方で、スタートアップとの企業文化の違いを実感します。とくにアクションの迅速化は当社が克服すべき課題です。当社は他の国内大手企業に比べて意思決定が速い方だと思いますが、協業を通してスタートアップにとってスピードがいかに大切であるのかを理解し、それを痛感しています。

また、海外のスタートアップとの協業において、言葉の壁がまだ存在しています。これについては、担当者同士で直接的なコミュニケーションを図ることがもっとも効果的であると考えており、当社のメンバーが正確な英語を話せなくても現地を訪れて対話することで対応しようとしています。


3. スタートアップとの連携を検討している分野の技術とは

当社がR&Dで力を入れている技術の方向性を大別すると、次の2つです。
1つ目は、基礎技術をアプリケーションに展開する技術です。
当社は、小さいもの、軽いもの、薄いものを製造するための基礎技術に大きな強みを持っているので、それらを活用して、アプリケーションサイドの技術に強みを持つスタートアップの知見と組み合わせることに取り組んでいます。
2つ目は、将来の社会貢献のためのまったく新しい技術です。
タブーな領域を作らずに、何にでも挑戦していく姿勢で新たな領域を探索しています。

具体的なマーケット分野でいうと、車(モビリティ)、ヘルスケア(メディカル)の2つです。
車の分野では、電気自動車の軽量化や自動運転の安全性の向上に関する様々な付加価値の提供を考えています。
たとえば、車内の居住性の向上や、危険防止を実現するアプリケーション商材の開発です。
ヘルスケアに関しては、技術革新の余地が十分にあると考えています。
小型で非侵襲な(注:体を傷つけない、痛くない)バイタルサインセンサなどの分野に取り組んでいます。
当社のセンシング技術とスタートアップのアプリケーション技術を組み合わせて、患者が測定時に痛い思いをしなくて済む、あるいは医師や看護師が時間をかけて行う必要があった計測を一瞬で完了させる製品などを提供していきたいと考えています。


4. 連携する可能性が高いスタートアップのタイプとは

基本的に当社はいかなる領域においても、スタートアップとの協業に対してオープンです。協業する場合はWin-Winの関係になるように、当社からも相手に対してリソースを提供して企業価値の向上に貢献することを目指しています。

たとえば、スタートアップが開発したチャンピオン・サンプル(注:サンプルの中で、期待された水準にもっとも近い結果を達成したもの)を当社の技術で小型化、薄型化し、量産に適したデザインを行うといった協業も考えられます。

当社は年間1兆個のセラミックコンデンサを製造しているように、小さくて、安くて、品質の良いものを大量に作る技術は世界有数であり、この技術で協業相手に貢献できます。

私が個人的に関心を持っているスタートアップのステージは、極めて早期のシードまたは、ある程度ビジネスが出来上がっているシリーズB、Cの段階です。前者は大学発のベンチャーや研究機関によく似ており、技術しかない状態です。その状態でスタートアップが当社のヒトやカネを活用して共に技術を育成していく手法は、当社の協業体制に合っています。また後者は、すでに顧客を獲得していてビジネスの基盤が確立されつつあるので、それを踏襲しながらビジネスを育成できることが利点です。


5. 従来、どのようにスタートアップとのパートナーシップを構築しているか

当社は、たとえば以下の3つのパートナーシップの形態の準備があります。

  • スタートアップの知見に投資したり、その知見を実用化、商業化するために、当社の既存のリソースを用いて製品化することを目的としたパートナーシップの締結
  • スタートアップが持つ技術の一部を切り出し、当社のリソースを組み合わせて新たな製品として売ることを目的としたパートナーシップの締結
  • スタートアップが作るものを当社のセールスチャネルで売ることを目的としたジョイントベンチャーの設立

ただし、新しい市場、顧客を対象とする場合には、当社の既存のセールスチャネルを活用することは難しいかもしれません。当社の案件に限らず、新規の技術は既存の顧客や市場などが異なるため、従来構築してきた様々なネットワークやノウハウを活用できないことが多いからです。その場合には、当社はスタートアップと一緒に時間をかけてそれらを開拓していく準備があります。

さらに、当社では、スタートアップとのパートナーシップの締結前から、スタートアップとの協議にR&D部門や事業部に参画してもらい、リソース提供の同意を得るようにしています。それがスタートアップとのスムーズな協業、共創開始につながっています。

また、当社では中長期を見据えたロードマップを策定し、事業計画を実行しています。そのため、当社はAIや自動運転など、現在、世間から大きな関心を集めている技術だけでなく、成果が出るまでかなりの年月がかかる技術、たとえば材料関連の技術を対象にしたスタートアップとも長期的なパートナーシップを締結して協業できるのです。

当社はスタートアップと共に新しいものを作っていくマインドがとても高いので、お互いに誠実に向き合いながら、イノベーティブな取り組みを進めることができる会社です。



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